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 人々の思惑がゆるやかに交錯していく。陽子の知らない場所で様々な歯車が噛み合っていく。そんな中でそれまで暗黙の了承として張られていた線を踏み越えて、陽子が彼の元を訪れたのは、昨夜の出来事により一つの限界が訪れていたからか。

 暮れきった夜の中、視界の隅にポツポツと散る灯火が流れていく。涼しい夜に吹く風は、陽子の前髪をなぶって消えていく。
 演習場に残る汗の匂い。そこで向かい合って佇んでいた二人の男のうち、ひとりが訪れた陽子に顔を上げる。ふっと鼻で笑った彼は伸びやかな低い声を出す。
「青師師、かわいらしい客人だ…。話はここまでだ。邪魔モンはとっとと失礼するよ」
「…待て、龍熄」
 だがちらりと陽子を横目で見た男は、桓魋の声も聞かずにその場を去っていく。
 すれ違いざまに彼の顔を見たとき、延王に似ていると陽子は思った。だが同時に、硬い髪を無造作に束ね、こぼれた髪がかかる力強く整った顔立ちは延王よりももっと鋭く荒々しい印象を受けた。
一体二人で何を話していたのか。
顔を背けたまま、うつむいた桓魋の表情は読めない。それでも、刹那に流れた気まずい沈黙の中で、先に口を開いたのは桓魋だった。
「…どういった御用件でしょうか、主上」
 だけど思わず、息がつまる。心のどこかで望んでいた声のはずなのに。陽子は顔を歪ませる。演習場の真ん中に立つ陽子の瞳の中で、視界の隅の灯火が激しく揺れる。
「…その話し方やめろ」
「…そういう訳には参りません」
 陽子は顔を伏せる。それに、と絞り出した声は彼女も気づかず掠れていた。
「用がなければ…来てはいけないのか」
 桓魋の動きが止まる。
だがそれも一瞬で、桓魋は無表情に踵を返した。失礼いたします、という言葉を残して。
 桓魋!と陽子の声が響いた。

「何故、稽古を…してくれない?」

 桓魋の肩がぴくりと揺れる。
「何故、私を避ける?!!」
 男の足が止まる。激しく揺れていた灯火の一つが唐突に消える。陽子の声は、どこか泣いているような声だった。
「何を話しかけてもお前はずっとその調子。私たちは…どうなるんだ?」
 桓魋は何も応えない。ぐっと彼の握りこぶしが強く握られる。
 主上。
「今までの私のことは…お忘れください。貴方は、この国の王です。待ち望まれた、王なのです。私との関係があったら貴方にとって…国にとって不利となるだけです。今までのように振舞うわけには参りません――――ですが」
陽子の表情が愕然と固まる。振り返った桓魋の瞳には強い光が宿っていた。ぽつぽつと、陽子が想像していたよりもずっと強い桓魋の覚悟が、囁く言葉となって落ちていく。
まるで幼子(おさなご)に言い聞かせるように。
「私は…貴方に忠誠を誓っています」
 それではいけませんか。
「貴方のためなら、この命捨てられます」
 それではいけませんか。
「貴方を死んでも、守り通します」
 それでは――いけませんか。
 それが私にできる、すべてなのです。

「…身の程を過ぎた言葉を、お許し下さい」
 
 今度こそ桓魋の姿は陽子から離れていく。
「桓魋…!!待て…!!」
 姿は夜の闇に溶けて消えゆく。ここで勅命と言えば、彼は止まってくれるのだろうか。「頼む…待ってくれ…」
だけど視界は不本意に潤んで、僅かに残っている彼の後ろ姿さえももう見えない。
 思わず口に手を当て、陽子はその場に膝を折った。演習場の中心で、彼女の背だけが丸く震える。偶然、その場に居合わせていた一人の人影に陽子は気づかない。

 月明かりだけが、嫌に綺麗な夜だった。

 その時の少女の咽ぶような声を聞く――柱の影に背を預けていた豪槍の表情は、誰にも見られることはなかった。

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 朝の光に、鈍い頭痛を覚える。
 昨夜のことを思うと、胃の辺りが微かに痛んだ。
 職務の一部を終え伸びをした時、窓を叩く音と共に久しぶりに聞く声が投げかけられた。
「やぁ!陽子、久しぶりだね」
振り返れば、窓際にひらりと手を振る美丈夫一人。何かを思う前に、口からするりと彼の名前がついて出る。
「利広…」
 あまりに唐突すぎて逆に落ち着いている陽子の表情に、利広は柔らかく首を傾げる。
「あ、あれ?もっと驚くかと思ったんだけど」
「突然すぎて驚くのを越してしまった」
 そう言った時ようやく利広と話している実感が出て、笑いがこみ上げてくる。執務室の窓を開ければ、騶虞に乗った利広が軽やかに滑り込んだ。今は一人?という利広の言葉に、陽子は頷く。
「それにしてもどうしたんだ?突然こんなお忍びで遊びに来たりして」
「ちょっと景王様との逢瀬を楽しもうかと…」
「ははっ嘘ばっかり」
 顔を見合わせて二人は笑う。
「まぁそれは冗談で、ちょっとまずい情報が入ったんで陽子に直接伝えに来たんだ」
 隠密に来たのはそのためだよ、と利広は少し表情を曇らせる。
「最近、慶国は異様に人口が増えているって噂は知ってるかい?」
 陽子は眉根を寄せ、頷く。先日霖雪と行った甘味屋での話を思い出す。
「あぁ。先日王都に潜入した時、堯天の者からそれを聞いた。慶国から追放された女人が戻ってきているのかと思って調べてみたが、どうやらそうではないみたいだ。どこから流れ込んできているのかまで調べたかったが、そこまでは分からなかった」
 そうか、と顎を抑える利広に陽子は続ける。
「それに、その時――私は何者かに囚われそうになった。敵は集団か、特定の個人か…よくわからないがとにかく大勢の者から追われた。私が王だということは誰も知らないようだったし、なぜあんな風に狙われたのかわからない」
 利広の表情がますます曇る。
「戻ってからは今のところそういった脅威はないが…宮中で職務の合間を縫って調べてみても何も掴めない。恐らくあの襲撃はここの者ではないのだろうけど…。それでも今の慶国では…」
 不可解なことが多すぎる。そう言った陽子の肩に利広は手を置く。
「舒栄の件も完全に片付いているわけじゃない。実は私はもう一つ、兵を用意しておけということを伝えにきたんだ。何かがひっかかる。君の直感の通り、この国では今何かが起ころうとしている予兆がところどころから見えている。新王が登極した今、外部にしても宮中内部にしても危険だ」
 利広の瞳が、鋭い光を帯びた。
「…誰が敵か、わからない」
 利広の表情を前に、陽子は顎に手を当てる。
「…気をつけるよ。宮中に昔からいるものは調査仲間からは外して、本当に信頼できる人間と一緒にこの国の内情を探ってみるよ」
利広の心配している通り、未だ宮廷整理は整っていない。距離の離れた桓魋に戸惑い、半身である景麒とも打ち解けられないままだった。自分の中に沸いた不安を拭うように、利広のすべてを見透かすような視線に言い訳するように、陽子は声をあげる。
「でも安心してくれ。何かを企んでいる人間はいるかもしれないが、今少しずつこの宮中でも信頼できる人々が増えているのも確かなんだ。その点に関しては…新しく入ってきた武官や文官たちが頼りになりそうだし」
 心配そうに彼は陽子の肩に置いた手に力を込める。
「…わかった。とにかく…気をつけて。もし、何かあった時は奏が力になるよ」
 ありがとうと陽子は笑う。
「それにしても、なんだか嬉しいな。久しぶりに利広と話せて。利広と旅をした時のことを思い出す」
 幸せだったなぁと思わず陽子はこぼした。
「変わらなければ良かったのにな…。今こんな風になっていなかったら、私と桓魋は何も変わらずにすんだんだろうか…」
 ピクリ、と利広の垂れた指先が動いた。
「っでも、やっぱり今そんなこと言っても仕方…」
 利広の声が、はっきりと響いた。

「…それは甘いよ」

 陽子。
「きっと桓魋は――選んだんだ。それが良いか悪いかなんてことは私にも分からないけど。きっと君のために選んだ。全ては変わってゆく。変わる覚悟のないものにはきっと何一つとして残らない。国なんて背負えない」
 何でそんなことがわかるんだ、そう言おうとして陽子は口を噤む。目の前にいるのは――六百年国を支えてきた〝王〟の一人だった。
「陽子…世の中の…何もかもが〝刹那〟だよ」
 かすかに、利広の表情に影がさす。窓硝子を透かした柔らかな光が、空間を透かしてゆらゆら揺れる。
「全てが泡のように消えていく。捕まえたと思って固く握りしめても、気がつけば指のあいだからすり抜けて、もう二度と戻らない…。最後は消えてしまうのだから、結局意味なんてないのか、と私はいつも思わされる」
 陽子は…殴られたように動きを止めた。ゆるりと見上げた利広の目は伏せられている。殴られたような衝撃だったのに、陽子の口からは何一つとして言葉はついて出なかった。拭えない寂しさの翳りを利広の表情に見た。

 この人は、六百年の間に一体いくつの刹那を見たのだろう。

「…そろそろ私は行くよ。景台輔にも――よろしく」
「景麒に…?」
 うん、と利広は頷く。陽子は斜め下を向いて、利広から目を逸らす。
「…約束はできない」
「どうして?」
「…私たちは仲が悪い。あいつも私のことは好いていないだろうし。私自身…景麒に対して色々と整理がつかないことがあるんだ」
 陽子はうつむいた。景麒に対して複雑な感情を抱くきっかけとなった記憶が浮かぶ。振り払うように頭を振った陽子に、利広は首をかしげた。
「そうなのかい?でも…少なくとも、私は景台輔は君を決して嫌ってはいないと思うよ」
 陽子は待ち望まれた王なんだ。そして利広は陽子を優しく見つめ、穏やかに微笑んだ。怪訝な顔をする陽子に、彼女の知らない話を利広は語る。瞳を見開いた陽子に、利広は言った。
真実を追求することももちろん今のこの国には必要なんだろう。でも同時に、自分も、半身も大事にしてあげて。一度きちんと景台輔と向き合って。

「景台輔は…ずっとずっと君を探していたみたいだから」

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 傾き始めた日の光が、回廊を歩く陽子の横顔を鋭く射る。
利広がここを去ってから、陽子はある場所へと足を運んでいた。歩くさなかで様々な者の囁き声を、陽子の耳は拾っていく。
「青辛が…半獣の分際で、師師など調子に乗るのも甚だしいわ」
「豪槍のクソ野郎…暴漢が、死ねばいいのに」
「なんであの人斬り龍熄がこの王宮にいるんだ」
「あの霖雪という男この前見たときは何やら一人で喋ってたぞ、気味が悪い」
「新入文官も武官も皆異端者ぞろいだ。あいつらは癌だ。一刻も早く王宮から駆除しなければ腐っていくぞ」
 桓魋の名に、陽子は俯く。そして宮中での新入文官、武官たちの評判はあまりにも悪かった。そしてその時陽子は――霖雪と豪槍の名を、どこで聞いたのか思い出す。頼りになると言っておきながら、彼らについて知らないことがたくさんあることに気がついた。

 彼らは、一体何者なのだろう。

 考えても何もわからない。慶の現状について水禺刀に聞いても、最近は彼女の迷いを写し出すのか、刃には歪んだ虚像が漂うだけだった。目を眇め、彼女は無言で足を進める。陽子が訪れた先は、仁重殿だった。彼女の姿に仁獣殿の女御がこちらに伏礼をする。
「ちょっと人払いしてくれるか。私が用があるのは…」
 だが口にする前に、するりと目的の人物が姿を現した。二人の表情を組んだ女御は、さっと一礼をするとその場から身を引く。陽子を前に、景麒は目を細める。
「…どのようなご用件か」
 自分が景麒を訪ねるなど王になってから初めてのことで、景麒はかすかに驚いているようだった。目を逸らした陽子に、景麒は私室の扉を開ける。
「…とにかくお入りください」
 堯天から戻った時も、大木に押しつぶされそうになった時も、景麒は陽子に対して怒った。陽子が鬱陶しがろうと。露骨に避けても。

 それでも、景麒は陽子とのつながりを絶とうとしない。

 陽子は何とも言えない表情で下を向いた。景麒に対して、複雑な感情は未だ消えない。
「お前とは一度…きちんと話し合わなくてはいけないと思っていた」
景麒を見るたびに思い出されるのは王になる前の過去。蓋をしてしまいたかったが、国に起こっている真実を知るためにも、まずこの過去と向き合わなければ前に進めないと思った。先程の利広とのやり取りを思い出す。最後に陽子の知らなかった話をしてくれたことを思い出す。征州での維竜州城の乱のことを覚えてる?と言う利広に陽子はあの時頷いた。
 その後の利広の穏やかな声が、陽子の脳裏に反芻される。

『そもそも…どうして私が、あの時君たちの戦いに参加できたんだと思う?』

そして利広の口から語られた内容に―――陽子は目を見開いた。
「利広から聞いたよ…。お前、征州の乱が起こって囚われる前…奏を訪れていたんだって?」
 ぴくり、と景麒の肩が揺れた。あの乱の光景が、二人の脳裏をよぎる。
「びっくりしたよ。お前は私を探していた…。奏に来た時点でお前は旅をしていた私の存在に気がついたが、その時同時に、自分に見張りがついていることにも気がついたんだろ?」
 ゆるりと陽子は大きな窓際に歩み寄る。傾いた黄金色の残照に浸かった窓硝子は、溶けるような蜂蜜色の光を浮かべていた。
「おそらく姿の見えない敵の狙いは新しい景王だった。だがまだ誓約を結んでなかったその時、追っ手の方は誰が景王か分からない状況だった。分かるのは、王気を追って景麒が動き始めたということだけだ。だからそれを逆手に取り、お前は先に援助を求めに奏の清漢宮を訪れたんだ。そして不思議なもので…その時は偶然、帰郷していた利広が清漢宮にいた。私たちと認識があった利広は、お前の言葉で私が景王であることに気がついたんだ」
 景麒は、自分だけが分かる新しい景王の情報を宗王たちに伝え、何かあった時のために助力を頼んだ。
「敵は誰かわからないが…気がついたお前は先手を打った。国のために一刻も早く王と誓約を結ばなくてはならなかったが、それでも何かあった時のために。そして…お前のその読みは当たった…」
 襲われたのは――奏と巧との国境線上での出来事だ。巧に入ってから突然降るように来た襲撃。あの時陽子だけが感じた殺気でもない強い視線は…王を守るために手を尽くし、ついに誓約を結ぼうとする景麒のものだったのだ。そしてその瞬間、敵も陽子か桓魋のどちらかが景王だということに気がついた。

「そして…私を逃がすために、代わりにお前は囚われたんだ」
 
 その後はもう知っての通りだ。景麒の失踪を知った利広が、陽子たちが知らない場所で一人暗躍し、今に至る。景麒を救い陽子を王にするために力を貸した。未だ真の敵は分からないが、景麒の行動があったからこそ利広は訪れ、自分たちはここにいるのだ。
 景麒の表情は動かない。ただ差し込んだ西日が、彼の顔を一際明るく照らして濃く影を浮かせていた。
 だけど陽子の心中はいまだ荒れていた。利広からいくら景麒が陽子のために尽力していたと聞かされても整理できない感情が吹き荒れていた。だって。
 初めて青年の姿の景麒と会った瞬間、気がついてしまったことがあるからだ。
 そしてそれは陽子にとって、目の前の青年に対して決して消すことができないわだかまりのわけとなった。この青年を見て一番思い出されるのは―――――

 この世界に来た瞬間の、陽炎だ。

もう遠い景色となった夏の暑さに炙られ熱を吐くアスファルトの道路。揺らぐ景色、揺らぐ人影、揺らぐ陽炎。
 その中で―――――陽子は金色の光を見た。金の光を持つ目の前の青年の顔を見た。それが意味することに、陽子は気がついてしまっていた。

「10年前…私をこの世界へ連れてきたのは…お前だったんだな」

 搾り出すような声を景麒に落とす。
 一瞬驚いたように目を見開いた景麒は、何も応えず目を閉じる。それがすべての答えだった。ぽつりと、つぶやくような声がした。
「王を探していた私は、蓬莱にも王気のようなものを感じ、確かにあそこを一度だけ訪れました。それが何を引き起こしたのか…私は何も知りません」
彼が何もかもの始まりだったのだ。彼が、陽子の運命の分岐点だったのだ。自分の人生を大きく振るわせられたのは、いつだって彼がいたからだったのだ。
唐突に遠い昔の遠甫と幼い日の自分が交わした言葉が脳内で響いた。
『景麒は未だ王を見つけてはいない。王に巡り会えてはいないのじゃ』
『そうなんだ‥。じゃあ!』
『じゃあ?』

『早くキリンさんが王様に会えるといいねぇ』

 幼い自分の声は、悲しいくらい綺麗だった。

失ったもの、得たものに―――もう良悪の判断はつけられない。
最終的に王になったことが良かったのか悪かったのか。

 それも陽子はわからない。
 
だからこの目の前の麒麟にどんな感情を抱いたらいいのか、陽子はわからなかった。ただ問われた瞬間、我武者羅に胸をかき乱したくなった。誰にもこの胸の内を打ち明けられず。ただ一人苦しんだ。利広からの言葉がより一層陽子の心を苦しめた。
「主上は私がお嫌いか」
 応えられなかった。
 陽子の応えを予期していたようだが、それでも景麒の鉄面皮の表情に影が走る。
「貴方は私に幻滅なさっているかもしれない。そうされても仕方のないことを…私は引き起こしてきたのでしょう。貴方にとって大きなことを。私が望む、望まないに関係なく…」
 景麒の言葉に陽子は激しく顔を歪める。
「憎んでいただいてかまいません。嫌っていただいてかまいません。主上が心を許していただけるまで…私は待ちます」
 何年でも。何十年でも。何百年でも。

「だから…お願いです」

 ポツリと景麒の声が落ちた。

「どうかそばに置いてください」

 陽子が目を見開く。初めて景麒が顔を歪める。
 陽子がどんな人生を送ってきたのか、彼は知らない。知りもしない彼女の人生に多大な影響を与えてしまったことも、今日まで彼は知らなかった。何がよくて何が悪かったかなんて、彼にも分からない。彼女の人生に、彼女の決断に言葉を添えることさえできない。陽子にとっての景麒は、複雑なものになりすぎた。

 ただ、それでも景麒にとって一つだけ確実に言えることがある。

 それは彼にとっての陽子の存在の意味。陽子が現れてから、輝きだけが彼の目の前を横切る。人生の中で、心の底から望んでいたのはこの輝きだった。これこそが、自分の生きる意味だった。悲しい生き物と言われる自分の、最大の生まれてきた意味だった。…あなたがどれだけ私を憎んだとしても。
 

「貴方は、私のすべてなのです」


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