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強い日差しが、焼け付くように目にしみる。 日差しの中ではひとりの老婆が佇んでいる。老体にはこの酷暑はきついだろうに、彼女は少しもそんなことを気にするような素振りを見せてはいない。 彼女の意識は、ただ目の前にある自分の道を塞ぐものに集中していた。ゆるりとそれに手を伸ばす。彼女にとってそれに比べれば、暑さなんかどうでもよかった。 (これさえ、なければ) 触れたと思った、その瞬間老婆は突然拳を固める。そしてそれを――殴り始めた。遠くから彼女を追ってきた孫らしき少女が泣きながら駆けてくる。 「ばあちゃん、やめて!!無理だよ!!怪我しちゃう!!」 それでも彼女は、やめなかった。こぶしを固めて何度も何度も叩いても、それはビクともせずに、やがて孫の言うとおり、こちらの方がくずおれる。老婆は目の前のそれを睨む。これがなければ。これさえ、なければ。 こちらとあちらを両断するこの壁がなければ。 願いとはうらはらに壁は国宝としてあり続ける。民を隔てる壁は、あり続ける。何度やっても、何も変わらない。あの人には、会えない。孫の言うとおり、やめた方がずっと楽だ。それなのに――― 何故、自分は諦めることができないのだろう。 数え切れないくらい泣いた宝石のようだと言われていた彼女の瞳は、もうシワだらけの皮膚に埋もれている。訳も分からず突然引き裂かれ、泣き続けていたあの日々。そして今、人生を重ねたからこそ、わかったことがある。 もう一度、自分の手ではかすり傷ひとつつかない壁に手を当てる。自分の傷だらけの手を孫が泣きながら、撫でてくれる。この子にも、見せてあげたい。世界はここだけじゃないんだということを。もっともっと美しい景色が、この先にはあるんだということを。 その時、壁の役人の怒鳴り声が老婆に向かって降りかかった。 「貴様、何をしている!神聖な壁に触れるな!!」 怒りながら大股で歩み寄ってくる兵に、孫娘は萎縮して老婆にしがみつく。老婆は孫娘を片手でかばいながら、まっすぐに兵を見上げた。シワに埋もれながら、どこまでも澄んだ眼差しだった。 「ここを―――通してください」 もう何度目になるか分からない、同じ言葉を繰り返す。 兵は、一瞬老婆の視線にたじろいだが、それでもすぐに気を取り直したのか、恐ろしい形相に戻る。 「何を馬鹿なことを!!気でも違ったか、そんなことが許されるはずがないだろう!!この壁から立ち退き、家に戻れ!!」 そして、うざったそうに老婆たちを追い払おうとする。だが、それでも。その日の彼女はもう食い下がることしかできなかった。ゆるりと、でも激しくかぶりを振る。 「嫌です。もう待つのは、嫌です。行かせてください。あの人の元に、行かせてください。誰に迷惑をかけるわけでもありません。どうか。どうか行かせてください」 もう限界だった。伸ばした手は跳ね除けられる。 「どうしてですか…?この世に生まれた以上、縛り付けられていい場所なんてあるはずないのに…!こんな場所に、ずっと…!ずっと!!壁ができてから、ここは慶でもなんでもなかったじゃないですか!!上の都合で、何十年もの時間を奪われ、誰もそれに見向きもしない!!あの人の元に、帰らせて…!!」 「くどい!!!」 殴られた。蹴り飛ばされ、だいぶ軽くなった体は鞠のように吹き飛んで地面を跳ねた。 それでも、すがりつく。 「どうか、行かせて…!!お願い…!!」 「この、老いぼれババア…!!!」 手を伸ばす。逆上した兵の手が大きく老婆に向かって振りかぶられる。顔が泥にまみれて、影にひずむ。孫娘が激しく泣く声が響く。 目を閉じる暇も気力もない、その時だった。 激しい轟音がして、信じられないことが、その時起こった。 ◆ 「建州の長壁の修繕工事?」 慶国金波宮。執務室で大量の書類に印を打っていた陽子は、きょとんと景麒の顔を見上げた。 はい、と無表情のまま景麒は頷く。 「今期一番の課題です。建州の万里の長壁は国宝。恒例の強度修繕工事の時期にきています」 建州の万里の長壁は、かの昔悧王によって建設を命じられた。かれこれ70年以上前、建州で起こった内乱をきっかけに、城壁とは別に作られた長い長い壁は、建州を両断するように位置する。国内を分断するように作られたその壁は、突破できない程の高さと長さを誇り、当時の王政の力を誇示し謀反への牽制ともなったと書物には記されている。だが、その建設にかかった費用は尋常ではなく、傾きを見せていた悧王の治世への打撃となったと噂されている。 悧王が崩御した後も、万里の長壁だけは、慶国の国家権力の象徴的な国宝として位置づけられた。 「長壁の強度修繕工事、ね…」 ふと、いつか聞いた話が陽子の頭を掠めた。陽子は顎に手を当て、思案するような表情を見せる。景麒は書類を卓上に置いて、陽子の前に滑らせた。 「草案の方を、週明けの朝議の際にご提出願います」 ん、と応えるようにした、返事ともつかない陽子の短い声を聞きながら、景麒はその場をあとにする。なんだか嫌な予感がした気がしたが、景麒はまさかと自分に言い聞かせた。 だがそれでも、扉から出て数歩歩いた時、やっぱり猛烈に景麒の中の何かが警鐘を鳴らして、再び彼は振り返り執務室の扉を開け放った。景麒の額に青筋が立つ。 「主上…!!」 そこにはもう、王の姿は見当たらなかった。 ◆ 珍しいやつだな、あんたも。この壁の話が聞きたい、なんて外から来る奴は、はじめてだ。 この地が分けられてから、俺たちが2つに分けられてから、半世紀が経とうとしている。 びっくりだろ? そんなに長いあいだ、2つに分けられている意味は、今はもうないようなもんだ。それでも、俺たちはこの壁の向こうにいけない。州を超えて、裏側から入ろうにも外堀が固めてあって入れないんだ。ごく一部の役人だけが、この壁の向こうに行ける。 これが意味するのは、今もなお、何千人もの人生が隔てられたままだってことだ。 何が国宝。何が国家権力の象徴。 この壁の、本当の意味を、知っているか。 …知らないよな。国の上層部にとって、大事なのは代々続く壁を滞りなく守ることだけだ。この壁はな、実は当時の建州の州候が王政に取り入って作らせた壁なんだ。もう当時、悧王の治世は傾きかけていたしなぁ。反乱を跳ね返すだけの力なんて、残っていなかった。 本当は王が鎮圧したと思われた内乱が、王と謀反者が裏でつながっていたなんて誰も想像だにしていなかっただろうな。内乱鎮圧の名目で作られた壁によって囲った建州の半分の土地を、王政とは切り離した自治領とすることで、当時の州候は内乱を収めた。もうその州候も死んで残ったのは、壁に隔てられたまま残った不自由な暮らしだ。誰も、その真実を知らないまま今日まで来た。いつの間にかこの時代の形骸は国宝となり、誰も手を出せない壁となった。 え?直接この真実を…国宝がもたらした弊害を、王に掛け合ったことはないのかだって? はは…やったさ。何度も、何度も。 でも、そんなことは世迷いごとだと、途中でひねり潰され王にすらたどり着かない。別に上の連中にとっては、真実が分かったところで今までと何かが変わるわけでもないからな。あいつらにとっちゃ不備のない今の状況でやっていけちまうんだ。現状維持が一番楽だ。 直接会うこともできない。俺たち訴えは届かない。…すまねぇな、見ず知らずのあんたにこんな話をしちまって。これは…俺自身への恨み言でもあるんだ。こんな壁ごときで惚れた女に対して約束一つ果たせない情けねぇ男へのな。自分の愛した人が無理やり壁の向こうに引きずられていくのも止められなかった。その頃は、壁に隔てられた向こう側の里木に俺たちのガキの卵果がなっていた。二人そろって、俺が迎えに行くって約束したくせに、自分のガキの顔も未だに見れてねぇ。今なお、果たせない約束は、俺が死んだらどこへ行くのか。ほんとに…情けねぇ。情けなさすぎて、今でも…泣けてくんだよ。 壁を扱う上の連中は優秀な仕事人ぞろいだろう。滞りなく、効率よく、なんだってできちまう奴らばかりだと聞く。だが、だからこそ、今の状況を見て、俺は思わざるをえない。どんだけ政に卓越していても、一番大切なことを見落としちまってんじゃないかってな。 悪かったな…こんな話して。嫌味に聞こえたんなら、謝る。 でもあんたあいつらと同じえらい奴なら、最後に一つだけ、聞いてもいいか。 なぁあんた、愛しい人はいるか。 ◆ 慶国に立ったのは、若き女王だ。 そんなこと、この国にいる者なら誰でも知っている。女王が慶国では倦厭されていることも。胎果である女王はこの世界の理の何もかもについてしらないことも。彼女がまだ、達王のような賢帝が持つ技量も経験も、何一つとして持ち合わせていないことも。 即位したばかりの若き女王に、周囲からの目線は冷たい。 常識も何も持ち合わせていない女王は未熟で、老官吏たちからしてみたらありえないことも平気でやってのける。さすがは主上、という言葉は褒め言葉ではなく皮肉の意味合いを含んでいることも、ここで生活する官吏たちには容易に通じる。建州の長壁についての議題を討議するその日の朝議も、彼女は簡素な官服で髪を束ねただけの姿で表れ、官吏たちは暗黙裏に目を合わせた。 「朝議をはじめよう」 背筋をまっすぐに伸ばして穏やかに微笑んだ陽子に、一番手前にいた官吏が手を上げ発言の許可を求める。肯けば、彼はすぐさま今日の朝議の本題を口にした。 「主上、建州の長壁の修繕工事の草案を、お願いいたします」 官吏たちの目が一斉に陽子に向かってそそがれる。さぁ、どうでるか。壁の修繕工事は、もはやどの王朝も避けては通れない恒例の行事となっている。老官吏たちにとっては陽子がこの件に関してどのような草案を出すかが、政をする王にとっての技量を表していると言えた。30年治世が続いた比王は、この壁を無難に修繕した。治世6年の予王はこの壁に関しては見向きもしなかった。この王は国家権力の象徴である国宝をどのように扱うのか、見ものだった。 陽子はじっと彼らを見る。そして―― 女王は、笑った。 「壊そう」 まるで、お茶でも飲もう、とでも言うように彼女は軽やかに言い切った。一瞬で、あたりが静寂に包まれる。誰かの一声が出たのは、たっぷり10秒ほどたったあとだった。 「は…?」 まるでその言葉が合図だったように、息を止めていた朝議が一斉に紛糾する。 「いくらなんでも主上の御一存だけではそのようなこと…!!」 「壁の修繕工事は今ではどの王朝でも必須事項です!!」 「慶の歴史を破壊するおつもりですか!!」 「建州の万里の長壁は国宝ですぞ!!」 「気でも違われましたか!!!」 「お考え直しを!!!」 慶国に立った若き女王は、若いがゆえにまだまだ経験が少ない。 慶の伝統に関する理解も、うまく政務をこなしていく技量も、彼女はまだまだ手探りだ。走り出したばかりの王朝はどこに行くのか、行き先もまだ決まらず官吏たちは白い目でみている。 陽子に、慌てた景麒が詰め寄る。主上、と陽子の耳で擦れるような音がした。 「何ということを仰っているのですか、主上!皆反対するに決まっています。伝統ある壁を壊すなど前代未聞です、少し頭を冷やして…」 だから言ったろう、と不躾な囁きが響き渡る。技量も経験もない少女王に、こんなことが捌けるはずがないだろう。朝堂を満たすいくつもの声に、陽子は眉一つ動かさない。 陽子は景麒の顔を見つめたまま、ゆっくりと口を開く。 「4274」 「は…?」 「この数字が、何を意味するかお前にはわかるか?」 陽子の言葉の意味が分からず固まる景麒に、陽子は少し寂しそうな表情をした。他の官吏たちも一様に訳がわからないというような表情をしている。 この数字は。 「この壁によって、今なお、王政の都合により家族や友人愛する人たちと無理矢理に引き離されている民の人数だ」 景麒の息が止まる。ぴたり、と満ちていた囁き声が、気まずげに止まった。 「王政は、一体何のためにあるんだろうな。鮮やかに目の前の事例を捌いていける技量も経験も私にはない。すべての奏上に対して、私は悩む。時間もかかる。愚かだとも思われるかもしれない。だけど、どれだけ愚かだろうと言われようが、今目の前にいる人々を見捨てて前に進めることが優れた賢帝としての技量ならば、そんなもの私はいらない」 景麒、と自分の名を呼ぶ声がした。 「国とは、人だ」 ◆ 光とともに、壁が砕け散った。 老婆が、彼女にすがる孫娘が、役人が、一斉に轟音に振り向く。 「?!!!」 そこにはこちらとあちらを開通する、巨大な穴ができていた。穴の中心部、あふれんばかりの逆光の中でひとりの男が光を背負って立っていた。 「これで開通、と」 男が翻す長槍が光を弾く。突然のことに声も出ない老婆たちに気がついた彼はにひるな笑みを浮かべる。 「よう。役人さんとご令嬢さん方。…役者は、揃ってるみたいだな」 轟音を聞きつけ、なんだなんだと武器を手にとった民たちが出てくる。 「な…なんだ貴様!!なんてことを…!!何をしたのか、わかっているのか!!貴様!!!」 先に現状に気がついた役人兵が、泡を食ったようにまくし立てる。 「今すぐ王に直訴してやる!!!こんなことをして、ただで済むと思うなよ!!!何者だ、貴様ぁ!!!」 男は焦る様子もなく、懐から一枚の書状を取り出し、役人の前に見せた。役人の目が瞬時に文字を追う。並んだ文字が意味する事柄に、みるみるうちに驚愕で口が空いていく。 男は肩をすくめてみせた。 「ま、そういうことだ。どうやら伝達が遅れているようだが、もう今日の決行はすぐに決まったことでね。これは―――主上の勅命。俺がここに派遣されたのも、熊の半獣の俺にはこの作業はうってつけだからだろうな」 半獣、という言葉に反応する役人に、彼は悪い笑みを浮かべる。 「俺は禁軍左将軍、青辛 桓魋。今日をもって、この壁は廃棄だ。俺はこれを伝えに、ここに来た。皆自身の手で、この壁を壊させるためにな」 もう向こうの奴らは、壁を壊し始めている。そう彼は笑う。桓魋の朗々とした声が、どこまでも広く響き渡った。 「お前たち、主上からの勅命だ!」 周囲は不気味なくらい静まり返っている。壁に大穴があいた騒ぎで、いつの間にかこんなに集まってきていたのかと言う程の大量の人々が、桓魋の言葉に釘付けになっていた。型破りなことをしているその場の空気を心から楽しむように、桓魋は声を張り上げた。 「この邪魔な壁、ぶち壊せ!!」 困惑も、混乱も、まだ起こっていない。 始まったのは、桓魋の言葉に誰かが―――雄叫びをあげた瞬間、だった。 役人が悲鳴を上げて逃げていく。人々は、一斉に壁に向かって武器を持って、力任せに壊し始めた。もろくなっていた壁は、綻び始める。叫び声が、ますます強く、激しくなっていく。 目の前で起きている信じられない光景に、ポカンとする孫娘を抱きながら、老婆はただただ座り込んでいた。 「え…?」 呆然とする老婆の元に、青辛と名乗った将軍がかがみ込む。その優しい表情は、昔のあの人を彷彿とさせるものがあった。李成さんですね?と、自分の名が彼の口からでてくる。 「急に驚かせてしまって申し訳ない。それでも…あなたに、会わせたい方がいるのです」 そう言って、彼が振り向いた方につられて視線を送れば…将軍の後ろから、ひとりの人影が見えた。だいぶしなびた、年老いた影が、駆けてくる。二度と会えないと思っていた、あの人が、自分と同じように50年分の月日を重ねた姿で駆けてくる。その姿を見たとき、手がひとりでに、自分の顔を覆っていた。将軍は穏やかな顔で、自然に脇にそれる。 嘘。 何も考える間もなく、気がついた時には、あの人の腕に抱かれていた。耳元で、待たせてすまねぇ、という声がした。つい数分前には想像もしていなかった、遠すぎる出来事が今、目の前で起こっている。 50年、待ち望んだ出来事が起こっている。 「あ、あああ…あ!!あなた…!!」 絞り出せたのは、それだけだった。孫娘は未だきょとんとした顔で、突然表れた知らない老人の顔を見上げている。待ち続けたあの人が、泣きながら、その子の顔をぐしゃりと見つめていた。50年ぶりの、冗談交じりの声がする。 「…俺の子か?」 「あなたの…孫です」 涙が、その瞬間溢れ出した。抱き合って―――――激しく泣いた。 朝議での王と台輔のやりとりが、鮮やかに脳裏に描かれる。王の言葉と目の前の光景と重ね合わせ、穏やかに微笑んだ桓魋に友人からの大きな呼び声がかかった。 「おい、桓魋!!こっちのでかいのもぶっ壊してくれや!!」 見れば虎嘯が、桓魋に向かって手を振っていた。この一大行事についてきた祥瓊と鈴の姿も見える。命をかけて巨大な敵に向かっていった和州の乱を彷彿とさせられ、桓魋の腕に力がこもった。にっと彼は口元の弧を深めた。 「今行く!」 そして駆けながら、大きく長槍を振りかぶった。 時代の形骸が崩れて、憧れた先から、どんどんどんどん、光が差し込む。走り出した新しい瞬間は、人々の胸に火を灯す。過去の遺物が、人々を隔てていた異物が、人々の手で崩壊してゆく。自ら立ち上がり、時代を作ろうとする人々の手によって。歓声がする。抱き合って崩れる男女がいる。 何十年と流れていなかった涙が、老婆の瞳からこぼれた。孫娘は未だきょとんとしている。だが、ふと空を見上げ、少女は大きな歓声をあげた。 「ねえばあちゃん!空を見て!綺麗な人がいるよー」 白い見たこともない美しい獣に跨ったひとりの少女が上空からこちらを見ていた。あの人が空を見上げて声をあげる。 「あいつは…壁について俺の話を聞きに来た…」 少女の赤の髪が風に揉まれて翻る。女王の名は、赤子、だったことが雷鳴のように脳裏に落ちる。 慶国に立ったのは、若き女王だ。 体を折って、老人は愛しい女性とその孫娘を抱き込んだ。 女王が、微笑んだ気がした。 その時人々は、たくさんの再会の奇跡を目の当たりにしていた。泣きながら、待ちきれない人々が、壁の穴をくぐり抜けて互いに行き来をし始めている。突然のことに戸惑いながらも、頭で現状が理解できていなくても、足だけはまっすぐ待ち望んだ生き別れた人々の元へかけていく。誰かの声が響き渡る。 ぶち壊せ。 もう誰にも止められない。膨れ上がった悲しみも柵も振り切って。将軍のひとふりとともに、巨大な歓声が響き渡り、赤髪の女王の髪がなびく。古い嘆きの象徴が、変革を恐れない若い力の前に崩れていく。民自身の手によって、立ち上がった人々の手によって、歴史が塗り替えられていく。 行き先の決まらない慶は――どこにだって行ける。 慶国に立ったのは、若き女王だ。 HISA様より、リクエスト作品です。内容は、普段陽子は経験がなく若いことがデメリットとして描かれる描写があるけど、逆に陽子の若さが活躍するような話が見たい、ということです。お応えできているかな?ヽ(・∀・;)ノHISA様のみお持ち帰り可です。 リクエストありがとうございました! |
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